感性【sensibility】

  この言葉の意味性は、東洋的な原意解釈と、西洋的な哲学的あるいは主義思潮の認識論、その要因用語的な変遷から統合的に捉えるべきだと提案しておきたい。 東洋的には、感性と感情は陰と陽での感慨的な意味性を原意として説得性のある定義になり得るという判断している。つまり、感性とは、生まれ持った感覚として、純粋で陽気な感覚判断そのものである。これは直感と言い換えることさえできる。一方の感情は、感覚にどろどろとした陰気性や陰湿的な心の状況によって支配される心的状況を意味している。感覚的な認識能力を一般的には、知識認識能力に対立するものとして、感性は感情をも総称する用語となる場合もある。 西洋では、古代ギリシア以来、感性は受動的なものであり、知性や理性よりは低次元と判断された。さらに、感情は、理性や善に対して自由な発現を妨げるものであると考えられてきた。ところが、直感的な感性や間接的な推測による認識としての理性、高次の直感に関わる知性という、三段階的な認識論であるプラトン主義の伝統から、直感という共通感覚は、感性という心の反応に対して高い評価が生じるようになった。特に、ルネッサンス時代の美的汎神論やスピノザの能動的感情は、近世英国の美的道徳感情の哲学にまで至った。近代科学での直感的な認識論での感性の役割は感覚論の哲学と合流してスピチュアリズムでの知性に繋がる感覚因子として、一般的な認識論になってしまった。 こうした変遷が、現代では、さらに記号論的、構造論的な手法を導入して、感性の中に知的であることと同質な心の反応や心の状態の論理性を探り出す指向性が生まれてきている。例えば、認知的な感受性と情動的な感受性という心的な事実の総体を感性と身体性の問題までが哲学的な問題になってきている。デザインにおいては、感覚の豊かさや快適性、あるいは五感的な印象のきっかけとして、感性工学とデザインとの関係までが議論されるほど、感性とは何か、重大かつ重要なデザイン的なテーマであり、デザイン述語になっている。   

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