モード【Mode】

  もっとも一般的なのは、ファッションでの流行という意味である。これはすでにパロール的な言葉であるが、ラング的には流行の形式や様式という意味を持ち、そこから音楽用語の旋方や調律、音階という意味にも繋がっている。数学的な術語としては、資料数値を把握する場合の、度数頻度の最大値や階級値などもモードと呼んでいる。こうした音楽や数学への展開からも読み取れるように、時間的な何らかの要因の頻度を様式化・形式化するという意味が、この言葉の核心にある。社会学あるいは記号学・構造学という観点からこの言葉をとらえた、ロラン・バルドの『モードの体系』は、社会生理の流動性と大衆的な時代認識との関係から、構造論的な統辞的解釈論としてのモードのシステム性を論じた。それは、モードそのものの様式や形式を「流行」という現象論としてまとめたものであり、その功績はきわめて大きい。例えば、現代の日常会話における、「何とかモードで」というパロール性は、その代表的な表現である。
 デザインは一般的に、流行、つまり時代認識の反映や価値判断への刺激装置であると認識される傾向があり、デザインの効用と効果が、モードの体系に組み込まれ得ることは否めない。そこからデザイン表現の様式かと価値創出そのものに直結しているという印象があるが、これは間違いである。こうした誤りは、デザインとモードがきわめて強固な関係にあると何の疑いもなく考えられてきたことに起因している。そこで私はモードとデザインの関係を隔絶するような統辞法を開発する必要があると考える。デザインが流行と決別すべきだという価値観は全く持たないが、流行を容認しつつも、一方で拒絶するようなデザインの革新性が必要であり、こうした拒絶的なデザイン指示であっても、結局は、モードの体系づくりに繋がっていることを再確認しなければならないだろう。   

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