アイデンティティ【identity】

  「あなたは誰か?」と問われたとき、人は明確に自己証明することができるだろうか。この質問に対して、自我によって統合されたパーソナリティが、社会や文化とどのように関係し、相互に影響しあっているかを、主体性・同一性・自己確認・帰属意識・居場所などで説明していく言葉として定義されている。米国の精神分析学者、E.H.エリクソン(1902~94)によって、アイデンティティの定義は体系的に整理されたと考えることができる。エリクソンは、自我には、自己意識と他者認識の2つの側面があり、その双方が同一化された状況を自我同一性と定義した。さらに、年齢や環境により、8段階にわたって自我の同一性が形成されていくと論理化することで、アイデンティティの概念は、単なる精神分析学の範疇にとどまらず、個人から、集団、国家、企業の存在意義統合的に説明していく手法言語となっていった。
 とりわけ、デザインによる、企業の存在意義や製品に対するイメージの確固たる証明論理言語として、ビジュアル・アイデンティティ、プロダクト・アイデンティティという言葉に繋がっていった。これらは、概念思考と造形表現の相互的、相関的なデザイン効果を説明する定義性を必要としている。コーポレイト・アイデンティティが、かつて「企業イメージの統一」とう安易な定義でブーム化してしまったのは、アイデンティティに対するデザイナーの根本的な知識の欠落であったと判断できる。結果、コーポレイト・アイデンティティが単なる見せかけの装飾的なものになっている企業は、バブル以後の経済的な苦境を乗り越えることができず、「企業の存在価値=アイデンティティ」を、社会・時代・文化に対して、表現し伝達することができなかった。デザインによる、アイデンティティの具現化と実行、運営、維持のためには、デザイナー自身の職能的な存在性が二重構造になっていることを自覚すべきではないかと考える。これについては次項 「アノニマス」を参照

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