アフォーダンス【affordance】

  米国の生態心理学者であるJ・J・ギブソン(1904〜79)によって「afford」という動詞から造語された、認識や認知の構造解釈的な用語である。1970年代後半からデザインにとっても形態造形の手がかりとなってきた概念と考えることができる。人間とモノの関係では、モノの形態が、afford=供給する・与える・提示するという仕組みや構造を有しているという意味を持っている。例えば、水の入ったコップは、喉が渇いた人にあたかも「さあ、私を飲み干しなさい」と語りかけてくる(=afford)。あるいは、雨が降っていると、大きな木が、「私の木の下で雨宿りをしなさし」と語りかけていると感じたとしたなら、人はモノから「語りかけられる」ように、そのモノの形態が認知性や認識性を構造化していると考えられる。モノの存在が、特に便宜を与えるアフォード性を、造形要因や形態要素に仕掛けていくことを、デザインの手法的なコンセプトとして扱うには、アフォーダンスという概念は重要な意味を持つと考えていいだろう。このギブソンの造語提案による知覚認識における重要な概念を、ギブソニアンと呼ばれる研究者たちが、コミュニケーションの手法概念にまで、実験や実証性を理論化し、この概念解釈と運用手法の試案は拡大している。しかし、この概念は、現代の欧米的な視覚認識がようやく辿り着いた概念にすぎない。東洋では、特にわが国では、モノが語りかけてくるということを、「ものがなしい」「ものすごい」「ものものしい」など、すでに物語という言葉が存在しているように、形態が人間の心理状況を突き動かすという概念を、観念的に有していたと考える。この「アフォーダンス 対 物語」の同意性と差異性を熟慮していくことが、造形デザインにとっては有効ではないかと考えたい。しかし、認知未体験の空間論での形態の知覚においてアフォーダンスはまったく意味を失うと私は判断している。   

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