和【Harmony (Wa)】

  日本で最初の憲法である聖徳太子の17条憲法の第一条に「和」が登場する。「和を以て貴しとし、忤ふること無きを旨とせよ」。つまり、「和」は、日本そのもの、さらに日本人にとって、基本的な日本的価値観を表す最重要概念である。そして、かつ日本自体を表している哲学的な用語でもある。例えば。「和を保つ」という言葉には、対立や阻害のない協力体制を表している。さらに「和を結ぶ」とは、争いをやめて仲良くするなど、集団的な協調性や平和性を目指す指導的概念を表す重要語となっている。日本そのものを観点的かつ概念的に表現する言葉として、「和風」「和式」「和様」「和議」などがあり、これらは「均衡のとれた調和」を表す言葉である。日本に異国文化が伝わったときに、日本的なるものへと民族的な意識を向けさせたり、異文化を受容するときの意識観念を包み込む言葉であった。17条憲法の冒頭で、集団的、統合的な協調性や平和概念など、広範囲にわたって人間的な優しさを下意識に持ち込んだことは、日本における宗教性以上の精神的文化を象徴するものであり、大きな意味があったと思う。その後、「和風」や「和式」という表現には、異文化を取り込んで、アレンジだけに止まらず、必ずオリジナリティのあるものにまで昇華する日本人の気風や意識や創造性が反映されている。もっとも、それこそが「総和的」な日本概念と断言することができる。しかしながら、「和風」「和式」「和食」「和様」などには、そこにいかにも日本を体現させているようかのような、偽装や疑似性を込めることも可能であることに注視すべきである。例えば、「和紙」というのは、本来は、コウゾ、ミツマタ、雁皮、麻という原材料のみでつくられる紙であるが、化学処理を加え、紙パルプを含有させた「和風紙」にすぎないものを「和紙」と呼ぶのは偽装であるかもしれない。また、「洋式」と「和式」という対比においても、「和」と「洋」の差異を曖昧にしている。あらためて、「和」という純粋な人間の概念をデザインとして再認識すべきである。

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