要素【Element】

  要素は要因と対照化して定義したほうがいいだろう。要素とは、数学的には要素の元、あるいは点的な存在である。集合とは、思考の対象を明確に規定する場合にその対象を指定した範囲や領域をさす、その範囲内や領域内に集められているものを要素と言う。さらに集合論の定義に限らず、何らかの部分や成分、性質までを要素と言う。これに対して、要因とは、時間的に変位・変動したり、変化していく因子を持つ要素だと言うことができる。原因となる要素であり、その原因とは時間軸、あるいは位相性を持ったものである。しかし、一般的には、要素も要因も同次元で扱われることが多いようである。これでは、本来の物事への認知性や認識性を見失わせる危険性がある。
 デザインにおける要素と要因には、明確な区分と分別が不可欠である。デザイン要素は、それを構成している成分や性質が静的である。静的である要素の組み合わせは、システム=体系になり得る。ところが、デザイン要因は動的、ダイナミクス性を含んでいることに注意しておくべきである。システムデザイン、またはデザインシステムは、要素の体系として、そのものがデザインの紅葉・効果となる。要因的なデザインあるいはデザイン的な要因は、そのダイナミクス性が、デザインの結果を生じさせる原因になっている。そのために、要因をデザインプロセスで取り扱うためには、常に、時間、位相、振幅、振動などの動的な面を認知し、科学的客観性でとらえるひつようがある。こうした認識において、要素と要因を、思考のなかで常に対照的に配置する作業が求められている。 例えば、デザインでのライフサイクルの実現や一過性の流行を考えてみると、前者は要因の構造化によって、後者は要素だけの構成によって、デザインの結果を決定することができる。しかし、そこには、要素と要因の関係に基づくデザイン理論はなく、検証も実践も不完全であることの証左である。あらためて、要素と要因をデザインにおいて定義しなければ、デザインのデザインは不可能である。   

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