感覚【sense】

  この言葉の意味は、いくつかの分野での、述語としての解説や考察結果を下敷きにして、その意味性を知る必要がある。 まず、哲学的な述語として、アリストテレスの「感覚能力」「栄養能力」「思考能力」という、物事の形相をその重量、つまり内容や性質を捨象して受容する能力という、哲学史上の源流から感覚というテーマを読み解く作業である。それは、感覚と知覚の区分が不分明であることから派生した哲学的な意味の変遷、これを追い求める方法が、哲学的な感覚の定義や意味を確認することになる。 次に、生理学的に、身体的な感覚の整理や感覚の種類を、科学的な研究結果から知識的な定義性として認識する方法による、定義の獲得である。これは感覚の基本的な特性を把握する確実な手だてになる。人体の整理に対して、刺激に対する受容機構の働きや、その結果としての特性という、あくまでも科学的認識という知識的定義はデザインにとっても、デザイン手法にとっても、デザインを開発する大きな道筋になると確信できる。 デザインにとっての感覚は、むしろ、感性や感受性に対してデザインが刺激発生装置であるかどうかということの検証を、一方では哲学的に、もう一方では生理学的に行うことから、デザイン用語としての感覚を決定すべきである。これは、あくまでもデザイン領域での「感覚論」として指向された結論、または議論課題としての感覚論にすぎないものになるだろう。しかし、感覚論の中でデザインと感覚の関連性を求めることに繋がっていく。こうしたデザインと感覚論の関連性は、結局は、デザインを取り巻いている刺激から影響されている事情によって判断するデザイン効用論の用語になるだろう。あるいは、デザインが果たす役割が、どういう機構で受容されることなのか、あるいは、デザインという刺激の影響力の確認のために、感覚論の対象としてデザインを位置づける意味性がある。日常的な感覚に対するデザイン、非日常的な感覚に対するデザイン、いずれも、感覚的な対象となるであろうデザインでの設計解を求める手法論の用語に重なると判断している。   

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