メディア【Media】

  「アルゴナウタイ」というギリシア神話がある。この神話に、メデューサという悪魔的存在である女性が登場する。彼女は本来、神と人間との媒介者である。メディアは、この女性の名の複数形mediumが語源とされる。人間は、周囲との関係づくりのために、意味性の有無に関わらず、心の中の印象や意図する情報を、身振りや音声、文字などの事物的パターンを媒介化させる媒介物すべてをメディアと呼んでいる。
 技術によるメディアの発明や、メディアによる新たな環境によって、マスコミュニケーションのあり方も変化してきている。メディアはその形式によって、その用途と効果が決定づけられているにすぎないのだが、マスコミュニケーションンの拡大と影響力によって、メディアの形式そのものが新たに社会化されれば、メディアそのものが、例えば政治的な権力・権威になっていく危険性があることは自明である。メディアデザインという言葉はあるものの、新しいメディアの形式に対応するコンテンツデザインに終始しているだけであり、こうした危険性への対処には、メディアデザインの概念は未だ何ら関与していない。特に、現代におけるインターネットというメディアなどでも、その内容の統治にまでイデオロギー的な権力性を残存させておこうという怠慢が蔓延し始めていることを指摘しておかなければならない。
 われわれはメディアに対して無防備になりすぎているようである。デザインには、民主主義とメディアの関係構造化の創出が求められている。そのことを私は、メディアデザインと呼ぶべきではないかと考える。   

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