ポストモダン【Postmodern】

  元来は、近代建築を乗り越える様式を示す言葉として登場した建築用語であり、1970年代、建築評論家のチャールズ・ジェンクスらの著作によって注目されるようになった。近代建築によって失われた装飾やさまざまな歴史的様式を混成した、新たな建築のスタイルに対する呼称であった。近代建築で最も重視された合理主義や機能主義を進展させようという試みとして歓迎され、ブームとなった。そして、ポストモダニズム=超近代主義という認識にまで至り、人間中心主義として、人間自身が自らの能力によって世界観を秩序づけるという理念となり、生活態度を変革し革新する思想となった。さらに、ポスト構造主義とも連関することで、思想的な意味合いを深めていき、構造主義の3つの骨子である、「関係性の重視」「全体論的な視点」「表層的であるよりも深層的意識」をも変容させた。それは、より異質な諸要素を関連づけることで、歴史的な重要性へと進化させていく、超越的で社会科学的な方法論となる。そして、その思想表現運動そのものを表し、服飾や工業製品の分野にまで普及する言葉となり、合理性や機能性に主眼を置いていたモダンデザインに拮抗する概念や造形運動へとつながった。つまり、モダンデザインが失ったといわれていた楽しみや遊びをさらに大胆に携帯や色彩で表現することで、デザインの新規性を訴求するシンボル的な時代実験となったのである。例えば、インダストリアルデザイン界では、メンフィスというモダンデザインへの反発的な造形作品の具体化が象徴的運動であった。メンフィスを主導していたメンバーは、それを、ポストモダンと評価されることに抵抗をしたが、私は共時性があったと思う。
近代社会がもたらした諸原理、例えば形式的な平等や業績主義を乗り越える表現形式として、ポストモダンが、デザインやアート、建築によって、真に近代を超越できたのか、それとも前近代への復帰に過ぎなかったのかは、いまだ歴史的な評価を待たざるを得ない。

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