バリアフリー【Barrier-free】

  障害物を除去することである。1960年代から一般化し、建築物や構築物において、障害のある人々、車椅子使用者や視覚障害者の行動に対しての物理的障害を除去するという意味の言葉であり、概念であった。70年代になって国連WHO(世界保健機関)では、1980年からスタートする「国際障害者年」の制定にあたって、「バリアフリーを目指して」という政策研究を、各国の専門家に依頼した。そうしたなかで、ユニバーサルデザインという提言が生まれた。しかし、バリアフリー、ユニバーサルデザイン、さらにはノーマライゼーション、それぞれの中核的理念には明確な差異があると指摘しておきたい。特に、バリアフリーは、わが国においても、バリアフリー法などがあるように、交通システムや都市計画、建築計画での指針的、制度的な施策として法律的にも規定されたものとなっている。しかし、現在では社会運動やパブリックデザインの政策理念としては、物理的バリアの除去に止まっていない。むしろ、人間関係や社会的コミュニティでの心理的バリアの除去という方向をも包含するようになってきている。日本語では、「しょうがい」には、2つの漢字がある。一般的には、「障害」と表現されているが、もう1つの心理的バリアを表わす「障碍」という言葉のほうが、意味的には今後より重要であり、この2つの意味を鑑み、「障がい者」という日本語表現が最適であると私は考えている。地方行政では、この「障がい者」を正式表現とするところも出てきている。すなわち、バリアフリーとは、「障害」と「障碍」、つまり、物理的障害と心理的障碍、この2つを社会制度によってまず除去し、さらには、制度ではなくて自然と人間社会のあり方としての理念になる必要がある。デザインにとっては、バリアフリーをはじめ、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザインはすでにデザインの対象としては当然のことであり、具現化するデザイン目標であることは間違いない。さらには、この3つを統合化して、ヒューマン・センタード・デザインからインクルーシブデザインへと進展したなかで、物理的、心理的なバリアフリーが希求されるべきだと考える。   

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