ノーマライゼーション【Normalization】

  この言葉は、1950年代にデンマークの法律家であり行政官であったN.E バンクミケルセンが、知的障害のある子供たちの福祉行政を政府に提言するためのコンセプトとして使った造語である。デンマークではノーマリゼーションと発音する。当初、知的障害のある子供たちの教育養護を目的とした施設の設立にあたって、このコンセプトは組み立てられていったが、次第に、障害者全般への福祉行政のあり方へとその適応範囲を拡大することとなった。バンクミケルセンは、「生活の質」がどんな人々にも重要であり、施設的な養護や介護ではなくて、障害者もできるだけ一般社会と同じように暮らすべきであると主張した。すべての人にとって最もノーマルなこととは、施設での介護にともなう生活ではなく、在宅で生涯を全うすることであるとし、「在宅死」にまで言及している。そして、この「ノーマライゼーション」というコンセプトは、世界的な社会福祉の政策立案、実践、運動の理念・原理となっていき、1981年から10年間、国際障害者年の運動を通して、障害者や高齢者の人格の尊厳に重点を置いた福祉政策概念として定義されることとなる。しかしこの定義においては、障害者および高齢者のプライバシーと自己決定権を重視し、危険が予測され不幸な事態を招くと思われる状況下にあっても、障害者および高齢者の選択の自由を尊重するとしており、この点では大きな議論が生じている。つまり社会福祉における制度と実践において全く相反する議論に分かれるという問題が残ってしまった。最近では、ユニバーサルデザインという概念によって、このノーマライゼーションをベースとしたデザインの実践が試みられている。しかし、ノーマライゼーションが行政的な福祉政策の理念・原理であった一方で、ユニバーサルデザインは、きわめて商業主義的なコンセプトヘと拡大してしまったという反省がある。そこで、もう一度改めて、ノーマライゼーションの概念とそのコンテクストを整理する必要があり、それはデザインにおいて、最も重要なことである。   

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