ライフスタイル【Lifestyle】

  この言葉は、終戦後、進駐軍とともに日本に入ってきたというのが通説である。今では、すっかり日本語となったが、その定義は変動している。まず、和風か洋風かという「生活様式」という訳語に繋がっていった。以後、日本人は自らの生活様式を自由に選択し、それは消費行動へと結び付いていき、消費行動・政治への関心行動・余暇行動などによってライフスタイルが決定されると言われるようになった。これは、社会的・経済的地位と同格の独立変数として生活様式が決まるということにほかならない。かつてマックス・ウェーバーは、社会的・経済的秩序の中でのみ、民衆の地位が決定されるという身分的な概念を導入した。社会的な地位の提示、あるいは特定の生活態度によって、財の消費が規定されるとしたのである。現代におけるライフスタイルの定義は、少なからずこのウェーバーの概念を源流とし、継承・拡張したものと考えることができる。私は、生活消費財に対する個人の嗜好パターンに基づいて生活様式を定義して構わないと考えている。そして、生活様式の構造、つまり生活構造は文化システムと連動して、時代とともに変動する。例えば、大衆文化は大衆のライフスタイルに応じて変動する。少数派の嗜好などは予測困難になっているが、それは「嗜好の多様化」「消費行動の多様化」というように「ライフスタイルの多様性」と言い換えられる。
しかし私は、生産と消費の構造が変化し、個人の価値認識そのものも変動した結果、人間ひとりひとりが、自分が社会的な立場を問い直すことで、ライフスタイルを決定していると考える。すなわち、嗜好や経済的現実よりも、生活環境や地域社会、世代分別そのものへの価値判断がやがては、資本主義そのものを変容させ、ライフスタイルもその相対化によって変動するものと判断することができる。   

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