民衆【Common people】

  大衆や公衆、あるいは一般人とも呼ばれる。権力や名声を持たず、権力者や支配者ではない無名の大多数の人々を示す言葉である。日々働き生活を地道に過ごし、社会の基本構造を支えている集団の人々である。その存在は通常では歴史の表舞台に登場することはない。しかし、権力者によって、大多数としての民衆の生活が破壊されたり、日常性が維持できなくなったとき、歴史が改変されることになる。つまり、権力への反抗が起こる。反乱、一揆、暴動、革命へとなっていくエネルギーを持っているのが民衆の力である。かつては、民衆の中の農民や労働者が革命的な群衆となって、歴史を突き動かしてきた。これに対して権力は、情報操作や意識改革、抑圧、管理によって、その制度構造に常に民衆の合意を促そうとしてきた。ときに民衆は、自分たちが生んだ権力者の独裁によってコントロールされ、ファシズムを経験したこともあった。そうした歴史を経て、民衆の主体性を尊重する民主主義という理念が政治体制の中で培われてきたと考えることができる。
 デザインとは、民衆の日常生活を支援する理想主義の具現化であり、コミュニケーションデザインやプロダクトデザイン、建築デザイン、都市計画などの手法論がある。デザインの領域では、民衆を生活者、あるいはユーザーと呼ぶように、民衆のエネルギー、さらには民衆によって繰り返される日常生活によって経済や文化が支えられていることを、具体的に受け止めると同時に、ユーザー感覚や生活者意識へ、デザイン対象が訴求することで、デザインそのものの存在価値が決定づけられるのである。

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