ナレッジマネジメント【Knowledge management】

  コンピュータ技術の発達によって、情報化時代が到来するという社会学的な予知は、すでに1970年代前後からあった。その予測仮説の背景には、「意識革命」というドイツ的な発想があったと言われている。その後、本格的なパソコンの登場は、社会の情報化に進展を加えた。日本語では、この「情報」という言葉の訳語的な解釈として、いくつかの系譜へと分化していった。インフォメーション、インテリジェンス、コンシャスネス、ナレッジメントなどである。現在では、情報としてのインフォメーション、そして情報化時代の技術としてのインフォメーションテクノロジー=ITが一般的な解説になっているが、これには見直しが必要である。情報化の高密度化は、情報開示や情報操作などによって可能であり、その内容は意識的に変容できるものであることを検証しなければならない。 そして、情報による知識、あるいは知識価値の意識化という概念として、「ナレッジメント」という呼び方がなされるようになった。さらに、その知識価値へと繋がる情報システムのあり方が問われるようになった。これは個人の知識という情報要素を、その個人を取り込んでいる組織全体で共有し、さらに組織における不可視的な資産として、知識を有効に活用するというような経営手法である。このような知識の集積と運営、管理、つまり「知識管理」をナレッジマネジメント=KMと定義するが、この場合の対象となる知識や情報とは、「形式知」という数値化・マニュアル化できるデータだけを意味しているのではない。通常は言語化すらできないような経験則や個人的なノウハウといういわば「暗黙知」までをも包含している。 ナレッジマネジメントを組織に導入し浸透させることにより、個人的な能力の育成とともに自己実現への手続きを合理化したり、組織そのものの統合性や生産性を向上させることができる。さらに組織と個人の意識の革新も実現できると考えられている。そのためには、単なるコンピュータシステムの適用だけではなく、知識の共有・適用・学習を仕組んでいくプロセスのデザインが必然である。デザインは、そのプロセスを持続させる環境やシステム提示のソフトウェア的な手法として位置づけられるものと考える。   

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