ヒューマニズム【Humanism】

  ヒューマニズムとは、西欧ルネッサンス期に古典的学芸の復興を通じて、人間性の陶冶を目指そうという機運から発生した。そうした機運が展開する流れは、主に2つの系譜を形成していった。まず一般的には、人間の本性=人間性に関わる事象への関心と愛情を一義とすることで、それによって、人間それぞれの特殊性や固有の価値観へ.の尊厳を認め、それらを擁護しようとする態度ないし志向である。次に、そのことが一般的な態度にまで高次化すれば、さらに理論化し強く主張するという思想的な潮流が生まれた。つまり、一方は心情や態度であるが、理論化された人間主義や人本主義は、思想や世界観である。この2つの志向性は、分別されるべきだろう。当初日本では、ヒューマニズムという言葉に対する訳語として、人問主義、人本主義、人文主義、人間中心主義などがあったが、いずれも定着せず、そのまま外来語として通用するようになった。ヒューマニズムの前提条件となるのは、人間と人間的事象に対する関心と愛情である。さらにそれは「非人間的なもの」の否定であり、そのためにはあえて人間の理知を超越した粗野や野蛮さすら認めていく、超人間的な思想へと進展した。つまり、人間愛・人類愛・個性の尊重がヒューマニズムの基本であるが、国家・社会・集団などの社会関係までも包含することがあり、ときには社会的矛盾を覆い隠すためのイデオロギーとなる危険性もあると思う。デザインにおけるヒューマニズムを語るには、デザイナー自身の人間性や人類愛への自覚と配慮を構築していく強固な見識と良識が必要であると考える。   

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