塗り【coating】

  器物の表面に、塗料を付着させ、乾燥させて皮膜を形成させることを塗りという。一般的には「塗装」である。塗装とは、器物などの保護、耐水、耐火、耐湿、耐熱、防音、防燃、電気絶縁などを目的としている。これは性能的な塗装、あるいは機能的塗装と呼んでいいだろう。またもう一方では、装飾的効果としての塗装がある。塗料には、油性塗料や水性塗料、樹脂塗料、繊維素塗料、合成樹脂塗料、さらに漆などがある。塗装、つまり塗るという行為は技術であり技能である。塗り方やそのプロセスは、テクノロジー的手法からエンジニアリング的手法、そして人的なテクニックなど広範囲にわたる。  しかしここでは、塗装ではなくあえて「塗り」とし、その定義を、漆の塗りに限定しておきたい。漆を使った塗りには、さまざまな科学的、あるいは技術的要素や要因が伝統的に包含されていると考えられる。素地調整や下地づくり、濡れ状況の管理などから、中塗り、上塗りなどのすべての工程が、さまざまなテクニックを経ることで、塗りの完成度が決定されていく。このプロセスは、きわめて人的な技能と勘によるところが大きい。これは現代の塗装の先端的な手段や手法の大きな要因となっていると考えられる。特に、上塗りという伝統技術には、花塗、蝋色塗、透明塗などがある。花塗は、研ぎ出しせずそのまま光沢を発する手法である。蝋色塗は油分を含んだ漆を上塗りし、研磨を繰り返すことで光沢を求めていく手法である。透明塗は素地の木目を透過させて見せる塗り方である。こうした塗り方が組み合わせられたり、漆塗りの産地が変塗りと呼ばれる独自の手法を生み出したりすることで、漆塗りは装飾と機能の要素を併せ持つ日本の伝統的塗り技法となった。しかし、問題は、こうした漆塗りの伝統技術が衰退していく現状である。少なからず、デザインによって、この日本の塗りという伝統文化を再活性化しなければならないと考える。   

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