サイバネティクス【Cybernetics】

  「舵取り人」を意味するギリシア語kebernetesから、1947年、米国の数学者ノーバート・ウィーナーが提唱した1つの学問分野である。彼は厳密な定義でこの学問領域設定を行わず、一般的には、生物と機械における通信・制御・情報処理の諸問題を統一的に取り扱う総合科学とした。ある目的を達成するためのシステムを対象とし、そのシステムには組織だって構造があり、その構造の結果として目的に合致した挙動を取っていると見なす。この見方は、その構造の持つ物質性や、どのようなエネルギーを利用しているかということではなく、情報をどのように伝送し、処理し、その結果事態をどのように制御しているかということの重要性に着目している。 情報化時代の今日においては、この見方、つまり思考方法や考案手段はすでに常識的になっている。例えば、記憶・認識・学習・自己組織化・原語・知能などを工学的な領域での研究対象とすることや、中枢神経系や生体制御メカニズムの理論構築においても、総合的な学問あるいは総合的な科学として、研究を整理する用語にすぎない。学問分野の名称としてはほとんど使われていない。結局、学問領域名にならなかったが、2つの歴史的な意義があったと評価すべきだろう。 まず、人間をモデルとする機械の開発と、機械をモデルとする生物体の研究によって、ホメオスタンスを持った自動制御システムという視座をうち立てた。これは人間と機械の有機的な結合システム=マン・マシン・システムの研究の繋がり、現在はシステム工学からロボット工学の理論として展開している。次に、神経系に特有の閾値の存在を発見し、生物、機械、自然現象などでも、非線形システムへの注目を高めることで、科学が回避してきた現象をも対象としたことである。これは結局、確率論的な空間での統計学として研究の意欲を促した。しかし、これはサイバネティックスという名称よりもオペレーティングリサーチへと発展した。必ずしも、人間機械というよりは、デザインにとっては、人間と機械、自然環境への考え方のアプローチなどにおける、参考例となる思考方法と考えるべきだろう。   

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