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第7回「松岡正剛」氏

編集工学・日本文化と
コンシリエンスデザイン


2015「KK塾」最終回は松岡正剛氏に講演を依頼しました。1992年箱根でのマルチメディア会議に民間出身4名の一人でした。その会議の基調講演ではムーアの法則のゴードン・ムーアが3原則論を述べ、これを聞いたのはその会議出席者では、私と彼だけでした。箱根の強羅花壇で初めて挨拶をしてからの盟友です。「隠坊」の話で人生を学んだ共通点があります。「隠坊」とは、死者を火葬する時に夜通し火葬状態を見守る人であり、死の世界へ人間を送り込む職業があったのです。「隠坊」については書き残す必要があると思っています。松岡正剛が「千夜千冊」はとうとう1604冊です。これは書評ですが、これを読めばその本を読んだような、その疑似体験ができて、本格的に読むべき書評はこの日本にこれしかありませんから偉大な仕事です。私もそれなりの読書家だと自負していましたが、彼の読書しかも批評眼にはとても太刀打ちできません。彼の書評している本のうち400冊ほどは読んでいる程度です。「編集工学」という名辞は、新しい言葉を生み、新語を生み出してくれていますから、漢字と書の世界観があります。これこそ、彼の言う「日本という方法」、日本を国家であるより方法と定義しています。「遊」という雑誌こそ、まさに文理融合統合、私が言い始めているコンシリエンスデザインです。それこそ、知的関心の方法を編集学化した「知の巨人」は松岡正剛でした。「情報の歴史」と「アートジャパネスク」こそ、すべての若者の教科書です。彼が率いてきた「連塾」には私も講演をさせてもらっています。その後、「日本という方法」は、あの3.11で終了しましたが、なんとあの天災と人災は「3.11を読む」に編集されました。それは原子力発電の問題が中核ですが、その背景には蝦夷と沖縄の問題が全知識人へのおおきな謎かけになっています。また、彼を支援しているスタッフの役割分担力はおそらく日本ではトップでしょう。スタッフ一丸となった講演支援の見事さは圧倒されました。3.11 で日本は、もう一度、国の立て直しを自然と今度は文明のしかも最先端である原子力の虚像を晒け出してしまいました。彼も指摘しているリスボンの大地震が欧州を少しは変えたぐらいだけに3.11の自然と人工でのこれぞ革新の本質を松岡正剛の知こそその方法論=編集工学で一新される必要性を再度、彼自身から語ってもらった気がしています。当然、私のルーチンである講演開始のプロフィール映像の音楽はLady GaGaであり、対談ではお互いが大好きなグレングールドの話で終わりました。2016の私のミッションとして「KK適塾」をこの秋から開講するつもりです。

松岡 正剛
編集工学研究所所長・編集工学研究所
オブジェマガジン「遊」編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授などを経て、現在、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。80年代「編集工学」を創始し、日本文化、経済文化、物語文化、自然科学、生命科学、宇宙物理、デザイン、意匠図像、無事世界などの諸分野をまたいで関係性をつなぐ研究に従事。その成果を、様々な企画、編集、クリエイティブに展開。一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『知の編集工学』『情報の歴史を読む』『ルナティックス』『多読術』『17歳のための世界と日本の見方』『遊学』『日本という方法』『フラジャイル』『松丸本舗主義』『意身伝心』ほか多数。編著に『情報の歴史』『アートジャパネスク』ほか。約1500冊のブックアーカイブサイト「松岡正剛千夜千冊」も好評連載中。