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第4回「長谷川秀夫」氏

宇宙開発に見る信頼性安全工学における
コンシリエンスデザイン


宇宙工学とデザインの関係は、まだまだ双方から、お互いのとりあえず話題が語られることがありません。話題ゆえ応答、そして課題ゆえ回答、問題ゆえ解答です。昨年から、宇宙工学とデザインを私が主宰する「KK塾」で、それも私のいとこ(父の姉の息子)と講演会をしています。宇宙工学といっても、その最大の問題点である「信頼・安全性工学」という宇宙工学のさらに専門からの話です。まず、何と言っても宇宙工学では、「修理を一切しないで寿命どおり」しかも一日24時間稼働のそれもシステム設計どおりのモノづくりでなければなりません。いとこ・長谷川秀夫工学博士は航空工学から、宇宙開発事業団時代は、ヒューストンにてNASDAの所長としてNASA・NASDA・ESA合同で宇宙実験棟「きぼう」の実質統括設計者。最初の宇宙飛行士・毛利氏を飛ばした責任者でした。以後も、H2Aロケットやはやぶさに関わってきたディレクターであり、現在はJAXAから宇宙開発機器の発注管理企業の社長です。信頼・安全性というのは、何と言っても「修理・修繕無し」が鉄則であり、例え話でいえば、「手術は不成功でも患者は助かる」ということです。そのためには、「知見」の裏付けが詳細に求められることになります。なんといっても無事故・無修理・完全であるモノとシステムづくりです。所詮、人間が創り出すモノは失敗して当然ということは無視する世界観です。「知見」とは、知識と見識をさらに深度を求めて、知識と知恵は経験からの帰納的な結論に対して、さらにどこまでも想定外を完全無欠化するという工程が「組織」の組み立て・運用・維持が必須だということです。それは想像力を果敢に発揮してしかも知恵や見識をさらに完璧にすること。なぜならば、宇宙工学での危機システムの部品点数は200万点をPDCAという方式。Plan→Do→Check→Actionという手続きがあるそうです。これは現代のモノづくり全てに適合した考え方です。そのために、「勘」を取り囲む「観」・「看」・「鑑」・「関」・「感」が配置された「知見」はまず、ハードがあってそれをソフトでどこまで支援出来るかという「事故シナリオ」が中軸です。あくまでの「怖がる」ことの重要さというのは、デザインでの問題解決以前に、問題提起があるのですがスペキュラティブデザインというような軽さはありませんでした。あくまでも無事故で無事なモノづくりをデザインは宇宙工学から学び取らなければならないということでした。

長谷川 秀夫
HIREC株式会社 代表取締役社長
HIREC株式会社は、次世代の高度な宇宙機システム/機器に対応した高信頼性部品の開発を進めるため、JAXAの部品プログラムの一翼を担い、HR5000S(高性能64Bitマイクロプロセッサ) 、B-SRAM(バーストSRAM)などの日本独自の高信頼性部品の開発、欧州との共同によるSOI-FPGA(完全空乏層型)の開発など、宇宙用部品開発のトップ企業として、最先端の宇宙用部品の開発・供給に取り組んでおります。